AOHITOブログ

キャリア30年以上のライターが「文章」について語るブログ(本と車も)

ブックレビュー『自助論』スマイルズ著

お得感たっぷりの「名言の宝庫」

スマイルズ『自助論』は、

ほとんどの読者の人生を変えるのではないか、

と思えるほど素晴らしい名著でした。


ウィキペディアによると、

明治時代に一時期日本の学校の教科書にもなり、

明治末までに国内で100万部以上売り上げたそうですが、

読んでみて、その高い評価に心から納得しました。

 

なにしろこれ1冊に、

偉人の伝記数十冊分の内容と、

数えきれないほどの名言が詰め合わされており、

まるで「お得感のかたまり」のような本だったからです。


これが再び日本の教科書になったら、

20〜30年後にはものすごい国に生まれ変わりそうな気さえします。

 

50代の私でも、読んでいて身震いがしたほどで、

「せめて20代までに読んでおきたかった!」

と痛切に感じました。

 

ちなみに明治4年の発売当時は『西国立志編』というタイトルでした。

明治後半の日本の人口は今の3分の1程度なので、

100万部のインパクは今よりも大きかったものと想像されます。

 

「心に刺さる金言」の数々

それでは、個人的に心に響いた箇所をいくつか紹介します。

 

(ここから引用)

政治とは、国民の考えや行動の反映にすぎない。どんなに高い理想を掲げても国民がそれについていけなければ、政治は国民のレベルにまで引き下げられる。逆に、国民が優秀であれば、いくらひどい政治でもいつしか国民のレベルにまで引き上げられる。つまり、国民全体の質がその国の政治の質を決定するのだ。これは、水が低きに流れるのと同じくらい当然の論理である。

(引用ここまで)

 

政治に関して、素人の私には、

実際のところ何がどうなっているのかよくわかりません。

 

それでも、

「ああなったらいいのに」

「こうしてくれたらいいのに」

という思いだけはあります。

 

しかし、そう思っただけで何かが変わるわけではありません。

 

どうしたらいいのかわからない時点で勉強不足なのであり、

結局は自分で自分を高める努力をするしかないということなのでしょう。

 

(ここから引用)

「意志のあるところ、道は開ける」――この古いことわざは、まさしく真理そのものである。何かを成そうと決意した人間は、まさにその決意によって幾多の障害を乗り越え、目標に到達する。できると考えさえすれば、十中八九それが達成できる。いいかえれば、決心さえ固めたなら、それはすでに現実に目標を達成したも同じことだ。この意味で、心からの決意は全能の神ほどの力を持っているといえよう。

(引用ここまで)

 

私はいつも自分が自分の目標に届いていないことに焦りを感じていますが、

まだまだ決意の仕方が足りないのかもしれません。

 

もっと強く決意し、その決意の力で困難を乗り越えていかなければ、

人生の残り時間を十分に生かせなくなってしまうでしょう。

 

決して後ろ向きにならず、

「まだまだこれからだ」と気持ちを引き締め、

決意を新たにしなければと思います。

 

(ここから引用)

単なる知識の所有は、知恵や理解力の体得とはまったくの別物だ。知恵や理解力は、読書よりもはるかに高度な訓練を通じてのみ得られる。一方、読書から知識を吸収するのは、他人の思想をうのみにするようなもので、自分の考えを積極的に発展させようとする姿勢とは大違いだ。

(引用ここまで)

 

ショウペンハウエルの『読書について』のブックレビューでも引用した箇所です。

⇒ブックレビュー『読書について』より「思索」ショウペンハウエル著 - AOHITOブログ

 

私自身、読書家といえるほどの量は読めていないと自覚していますが、

それでも本が好きなので、本から知識を得ようとする意識はあります。

 

もちろん読書を通して学ぶことはとても重要だと思いますが、

ただ書いてあることを「鵜呑み」にしていると、

ウソや間違いにだまされる可能性もあります。

 

得た情報を無条件に信じるのではなく、

さまざまな情報を集めて比較・精査し、

どこに真実があるのかを「自分の頭」で考えなければいけない、

という意味でしょう。

 

こういっている時点で、

『自助論』に書かれていることを「鵜呑み」にしているようですが、

改めて冷静に考えてみても、これは本当のことだと思われます。

 

(ここから引用)

時間を十分に使いこなせないと、しだいに悪い性癖に悩まされるようになります。いわゆる“ずぼら癖”というやつです。こんな悪癖につまずかぬよう気をつけなさい。君は“精励勤勉”を座右の言葉とすべきです。なすべきことはただちに実行に移しなさい。気晴らしの時間は仕事の後に回すこと。仕事そっちのけで楽しんではいけません。

(引用ここまで)

 

ウォルター・スコットという詩人が、

就職を間近に控えた若者に与えたアドバイスだそうです。

 

これも私自身、非常に身につまされる言葉です。

 

私はもともと、

「夏休みの宿題を、夏休みの終わり頃に必死になってやる」

タイプの少年でした。

 

この癖は歳を取ってもなかなか直らず、

もちろん仕事は毎日一生懸命やっているつもりですが、

余った時間をしっかり有効に使えているかどうかと問われれば、

ダラダラと無駄に過ごしているときもあります。

 

「癖」という意味では年齢的に手遅れかもしれませんが(笑)、

少しでも無駄な時間を減らさなければといつも考えています。

 

これら以外にも、

本書には驚くほどたくさんの金言名言が詰まっています。

 

前向きに努力する気持ちをかき立ててくれる快著であり、

多くの方々に読まれることを心から願っています。

 

ちなみに私が読んだ竹内均さんの翻訳は、

すっきりとした文体でとても読みやすいと感じました。

 

他の翻訳者のバージョンも出版されているようですが、

そちらは読んでいないのでわかりません。

 

もし比較できたら、

お好みの翻訳を選ばれてもいいのではないでしょうか。